静岡県と着物

静岡県では人口約360万人を越えています。
日本のほぼ中央に位置する静岡県。 雄大な富士山や駿河湾があり、美しい大自然が最大の魅力です。
自然が生み出す絶景を満喫できる伊豆半島や、歴史ある温泉地の熱海や伊豆など、人気の観光地が点在し、自然や温泉に癒されに訪れる方も多く、全国的に有名な緑茶やミカンなどの特産物が栽培されており、様々な特産品も楽しめます。静岡で着物といえば「注染ゆかた」「遠州木綿」「掛川葛布」「颯々織」などが有名で、注染ゆかたの【注染】とは、明治後半に大阪で始まった日本独自の染色法のことで、何枚も重ねた生地の上から染料を注いで染めることから、【注染】と呼ばれています。

・静岡県の代表的な着物

「伊兵衛織」

伊兵衛織とは静岡県浜松市旧家高林家で織られていた絹織物です。名前の由来は高林家の当主名の「伊兵衛」からつけられてたそうです。 先代伊兵衛は柳宗悦と一緒に民芸運動を進めた人で、茶人・文化人との交友関係などから影響を受け浜松市に日本民藝館を開設。伝統工芸品である「ざざんざ織り」の流れを汲んでいるため生産方法など、様々な点で共通点があります。 伊兵衛織は玉繭を手作業で紡いで作られています。その玉繭が入手できなくなり、2013年10月以降は生産を終了してしまったので現在存在している着物や帯はとても貴重なレアものとなっています。


「遠州木綿」

遠州木綿とは、静岡県西部の遠州地方で作られている伝統的な木綿生地です。遠州地方では古くから綿花の産地として栄えていましたが木綿が栽培されたのは安土・桃山時代頃からで、栽培農家が副業としてはじめた手織りの綿織物が起源とされています。歴史が古い中でも縞や格子柄は100柄以上あり、バリエーションに富んでいて 懐かしくも新しく感じるデザインが現在も進化を続けて出来ています。昔と変わらない8つの独立した工程で今も生産が行われています。明治19年頃に洋式紡績工場が設立され明治29年に遠州のトヨタグループ創業者である豊田佐吉氏によって小幅力織機が発明されました。それにより、綿織物の生産量は飛躍的に増加していきました。 遠州木綿は、木綿の持つ優しい肌触り、そして日本らしい風合いや柄が魅力的で 冬でもあたたかく着れば着るほどに肌に馴染みます。 色の組み合わせや縞の幅などで、様々な雰囲気に慣れるので人気の高い織物です。


「掛川葛布」

掛川葛布とは、静岡県西部の掛川市周辺で作られている織物で経糸、緯糸に葛糸を使用しています。葛糸とは葛の蔓を煮て水に晒して発酵させ繊維を取りだして績んだものです。経糸に木綿や絹、麻を使用する場合もあります。今から700年以上前の鎌倉時代頃から存在していたとされ、その頃からの製法が受け継がれ江戸時代には裃や合羽などに使用されていました。 参勤交代のお土産品として献上されていたこともあったそうです。 掛川葛布はひとつひとつが手織りであり、葛の繊維を取り出して一本の糸にする工程がとてつもなく大変である為現在では2件の工房でしか織られていません。 ですが葛糸を使用してできる光沢や作り出せる温かさ・風合いは着物を始め、草履・ふすま紙やブラインド・ハンドバッグなど様々な場面で活躍しています。

・静岡県を代表する作家や着物と関わりの深い著名人
芹沢銈介は、静岡県静岡市出身の染色工芸家です。静岡市名誉市民であり、重要無形文化財「型絵染」の保持者です。沖縄の染物・紅型に出会ったことを機に型染めを中心とした染色の道を歩みます。 型彫り、染めまでを一貫して型絵染技法を確立し1956年に人間国宝に認定されました。今までの染色の枠組みにとらわれず、芹沢ならではの独特のデザイン性が国内外から賞賛されました。 1976年にはフランス政府から招聘をうけパリで大規模な個展を行い多くの人々に愛好されました。

・静岡県の着物の歴史は？
静岡県の着物の歴史は、特に「駿河織物」に関連しています。駿河地域では、江戸時代から養蚕が盛んで、絹織物の生産が行われてきました。特に、駿河の地は良質な蚕を育てる環境に恵まれ、織物技術が発展しました。 また、静岡県は「駿河竹千筋細工」や「駿河蒔絵」といった伝統工芸も有名で、これらは着物の装飾や小物として使用されます。明治時代以降、近代化が進む中でも、伝統的な技術が受け継がれ、現在も多くの職人によって静岡の着物文化が守られています。これにより、静岡県は日本の着物文化において重要な役割を果たしています。

・静岡県の着物文化の特色は？
静岡県の着物文化の特色は、特に「駿河和染」にあります。江戸時代から続くこの技法は、藍色と白のコントラストが特徴で、伝統的な型染や筒描きなどの技術が用いられています。駿河和染は、武家や町家のために幟やのれん、風呂敷が染められ、地域の生活に密接に関わってきました。 また、芹沢銈介氏のデザインが融合し、現代的な美しさを持つ作品も多く、伝統と革新が共存する文化が形成されています。

・静岡県に伝わる伝統的な織物と染色技法は？
玉糸という太く節がある絹糸を使うことで、厚い生地となり、独特の風合いがあるざざんざ織や、藍色と白のコントラストがはっきりしていることが特徴的な江戸時代から受け継がれた技法と人間国宝故芹沢銈介氏のデザインが融合した「駿河和染」などの伝統的な染め物です。
浜松には、「手捺染（てなっせん）」という伝統工芸の技法があります。
「手捺染」とは、着物の友禅染めを代表する染色技法（型染め）のひとつです。
手捺染には、大量の良質な水が必要とされ、天竜川の水源豊かなここ浜松市でも受け継がれてきた伝統技法です。

・静岡県の祭りや行事の着物との関わりは？
静岡県の祭りや行事における着物との関わりは、特に「静岡まつり」と「浜松まつり」で顕著です。静岡まつりでは、参加者が駿河和染の着物を着用し、華やかなパレードや伝統的な踊りを披露します。これにより、地域の文化を祝う重要な機会となっています。 浜松まつりでも、地元の伝統を反映した着物が着用され、特に鯉のぼりや凧揚げの行事で見られます。

・静岡県観光や着物体験は？
静岡県の観光と着物体験では、特に「静岡市」と「高山市」が人気です。静岡市では、駿河和染の着物をレンタルでき、歴史的な街並みを散策しながら着物姿で観光を楽しむことができます。特に、静岡浅間神社周辺は美しい景観が広がり、着物での散策に最適です。 また、高山市では、伝統的な町並みや美しい自然を背景に着物を着て散策する体験が提供されています。これにより、観光客は静岡の文化を体感しつつ、思い出に残る特別な体験を楽しむことができます。