八丈島では、現在大きく三種類の黄八丈が生産されています。ひとつは黄八丈織物協同組合を通じて生産される本場の黄八丈、もうひとつは黄八丈めゆ工房が手掛ける山下ブランドの草木染黄八丈、そして菊池洋守氏が制作する八丈織です。 菊池洋守氏の「八丈織」は、黄八丈の伝統的な綾織技法を基にしながら、シンプルで洗練された配色が特徴です。現代の街並みにも馴染むこの織物は、着る人を引き立てる軽やかな風合いを持っています。従来の本場黄八丈がコブナグサ、タブノキ、椎の三色で染められているのに対し、菊池氏の八丈織は淡い色合いやシックなニュアンスカラーを使い、独自の美しさを表現しています。 八丈島に伝わる伝統と柳悦博氏から受け継いだ美の感性が融合し、八丈織には綾織特有の文様が淡く浮かび上がります。織物は、複雑な綾織はもちろん、花織や吉野格子、自らが紡ぐ「おやり糸」を使用した平織など、多様な技法で表現されています。シンプルな無地でも、八丈織ならではの上質な艶や光沢感が際立っています。 菊池洋守氏は、織りだけでなく、糸繰りや綛揚げ、さらには幻の糸「おやり糸」の制作までを手がけています。工房には年季の入った様々な道具が揃い、今では珍しい竹筬を使用して織り上げる技術は特筆に値します。この独特の道具使いが、極上の風合いを生み出しています。 菊池氏の八丈織は、華やかさと上質な美しさを兼ね備え、現代のきものシーンでもすっきりと都会的に着こなせる洗練されたスタイルを提供して高い支持を得ています。 なお、菊池洋守氏は2019年3月に永眠され、そのため彼の作品は今後生産されることがない希少なものとなっています。
画像の着物・帯は弊社で過去に買取したものです。
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